一目ぼれだった。ガラスのショーウインドの中の、古くて高そうなおもちゃたちの中で、私の目は一つのおもちゃに釘付けになっていた。袋入り、ソフビの海のトリトン。オリハルコンの剣を片手に立つその勇姿は私の様々な思い出を喚起し、想い忘れかけていたおもちゃ集めの旅へ私を導く羅針盤のような存在であった。
子供のころ兄の怪獣ソフビ集めに影響を受け、私は色々なおもちゃを買ってもらっていた。ドラえもん、海のトリトン、ウルトラマン・シリーズが私の大好きなキャラクターで、ソフビ、超合金、プラモデル、怪獣消しゴム、レコード、色々なものを持っていた。漫画も同じく買い集め、藤子不二雄作品は私の大のお気に入りだった(たくさんの単行本とコロコロコミックをよく読んでいたものだ)。
昔から物を捨てられない性分で色々なおもちゃを保管していたが、たくさんの人々と同じで親に捨てられたりして少ししかその頃のコレクションは残らず、また、高校、大学では、勉強や部活に忙しくて、おもちゃに関心を寄せている時間がなかった。こうして、おもちゃ集め再開には、長い間のブランクがあった。
しかし、その頃のお宝ブームの中、様々な機会に(なんでも鑑定団、まんだらけなどのお店、様々なコレクター雑誌etc.)こういったおもちゃたちに再び出会うことも増え、あの頃の、駄菓子屋に毎日のように通い、また、おもちゃを買ってもらってワクワク楽しんでいた頃の気持ちが再び甦ってきた。何よりも、昔の友達に再び会ったようなあたたかな感覚がたまらなく好きだった。
そんな時、高松のある古いおもちゃを扱っているお店を偶然見つけ、そこへ訪れたところ、そこには夢のような空間が・・・。ソフビ、ブリキ、超合金、漫画、レコード・・・
まさしく私が毎日通っていた駄菓子屋のようなその空間で、しばし私はボーッとしていた。
すると、高そうなブリキのアトムらと同じように、ショーケースに飾られたおもちゃたちのなかで、私がハッと目をとめたものがあった。それが、袋に入った海のトリトンのソフビ人形だった。私はこのソフビを持ってはいなかったが、それは、私の小さい頃の様々な思い出を呼び起こしてくれた。初めて見たテレビアニメ(私が覚えている限りでは)がこの海のトリトンであったからだろうか、その頃から始まる、おもちゃたちに囲まれて過ごした子供のころの日々がいっぺんで甦ってきたのである。外では、友達と夜遅くまで怪獣ごっこに励み、家では、リモコンなどまだない、チャンネルをガチャガチャまわすあの変にでっかいテレビの前でよく遊んでいたものだ。そんなセピア色の風景と懐かしいにおいが・・・。私はその魅力にいっぺんで虜になって、おそらく高かろうそのソフビについて、すぐにお店の人に値段をきいていたのである。2日後にそれを手に入れるまで、誰かが私のかわりに買いはしないかと、夜はよく眠れなかったことを覚えている。
こうして、私のおもちゃ集めは再開されたのだ。したがって、本格的なコレクション歴は10年程度ということになるのだが、おもちゃや漫画への関心は子どもの頃に負けず劣らず、日に日に高まっていく一方なのである。
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