1.ナイトメア−との出会い
私が、広島に住んでいた時、1993年か94年のクリスマスの頃に、マイナーな映画を上映する小さな映画館で、彼女と見たのがこの映画でした。なんの前知識もなく、彼女が見ようと誘ってくれたのと、”クリスマス”(まあ、”ナイトメア−”というのは気になりましたが)というタイトルがついていたから見たようなものでした。私にとっていい映画とは、すべての面白味-笑い、ロマンス、エロス、恐怖、アクション、せつなさ・・・を含むものです。何気なく見たこの映画にそれらを発見できたのは非常な驚きでした。しかも私は結構ひねくれ者ですから(笑)、あまり人がいい、いいと大騒ぎするものにはかえって興味をいだきません。こんなちっちゃな映画館でおそらくあまりヒットしていないのであろう、細々とやっていたのが、私の感動をより深めたのでした。
そして数年後、神戸に用事があり、ついでに元町あたりの高架下のお店を覗いていた時、はっと見つけたのが、ジャックのシャンプーボトルとPVCのゼロやウギィ・ブギィたちでした。広島でいた時、セガのUFOキャッチャーで、ナイトメア−のTシャツがあったのはよく覚えていましたが
(彼女にいくつかあげたのですが、まだ持ってるのかな?)、私は地方に住んでいるため、その時までナイトメア−のおもちゃがあることを知らずに過ごしてきました。ですから、それらを初めて見た時にはウオーというような雄たけびを上げてしまいました(笑)。そこのおじさんに聞くと、アメリカから仕入れてきたとのことでしたが、値段がその時の気持ちでは高いと思い、その場では買うことができませんでした。しかし、考えた挙げ句にそれらを買おうとして、そのお店に数日後舞い戻ったはいいですが、その時にはすべて売り切れていました。このとき、私のようにこのキャラたちに魅せられた人がたくさんいるのだとはじめて感じたのです。
しかし次に、大阪の街を歩いていた時に何気なく入った店でもナイトメア−のグッズを見つけました。そこでは前に見た以上のグッズがあり、はじめてハズブロのアクションフィギアも見ました。このアクションフィギアの出来には見とれてしまいました。しかもそのブリスターパックの裏を見るとまだまだ他のキャラもあるみたいではないですか。これにはうれしさももちろんあったのですが、その未知のナイトメア−・グッズの量に、お金の面で不安を抱いたのも事実でした(これは後日、的中することになるのですが)。そして、そのお店の棚に燦然と輝く、二つのナイトメア−・ドール。それはあのジャックとサリーのアプローズ・コフィン・ドールでした。はーっとその美しさにため息をつき、10万円の値段にまたため息をついた、それは96年夏頃の出来事でした。
2.ナイトメア−との再会
わけあってアメリカに留学することになったのがその96年の秋。はじめは生活に精一杯でおもちゃなどを考える余裕もありませんでした。しかし、こころのなかでは、どこかで彼らに再会できるのではとの思いは確かにありました。そして冬も近づいたある日、街の本屋で私は立ち読みをしていました。そして何気なく(また!)見つけたのが、COLLECTING
TOYSという雑誌でした。「そういや、おもちゃに関してすこし遠ざかりかけてるなあ」などと手にとってぱらぱらページをめくっていると、私の指があるページでピタッと止まりました。そこには
"T' was the Nightmare Before Christmas"と題して、ナイトメア−のキャラが一同に会していたのです。そして、数ページにわたってナイトメア−グッズの紹介、値段のリストが特集されていました。「やはりこんなにグッズはある。でも、たしかに高いけど、日本で見たのに比べると断然安いではないか!」このように、私のアメリカでのナイトメア−たちとの再会はこうしてふとした偶然によって引き起こされたのでした。それにしても、12フェイス・ジャックの写真を見た時はえーなあ、えーなあとひとりつぶやいていたなあ(今でもだけど)。
3.ナイトメア−・グッズ、昔と今
それからは、勉強の合間に息ぬきとして、色々な雑誌やインターネットで情報を集め始めました。また、様々な値段を見ていくにつれてだいたいの値段の相場というものがわかってきました。そして、とても安いものを見つけた時は即、注文していくようになり、コレクションの数もだいぶ増えてきました。しかし、この頃の半年から1年は運がよかった時期でした。この頃には値段の相場も知らず、安く売っている業者もたくさんいたので、掘り出し物というのも見つけられたのです。しかし、ほぼ1年後には、ここアメリカでも値は急騰し、ただでさえ安くないのに、すくなくとも1.5倍の上昇をしていました。
そうこうしているうちに、1999年頃でしょうか、日本で(もともと、どこかアジア産の怪しげなグッズは出回っていたのですが)ナイトメア−グッズが再生産されるということを耳にしました。なぜ、今になって?との感は強かったのですが、それだけナイトメア−が認知されてきたと思えばうれしいものでした。しかも、映画の人形に近い精巧なものを作るというではないですか。期待は高まり、日本でそれらを買えない自分を恨めしく思ったものでした。しかし、それらの値段を知った時その嬉しさはかなり崩れ落ちてしまいました。値段が高い!一つの人形が9千円近くするなんて・・・それにはおもちゃというあたたかな響きは感じられません。確かに今の物価やそのグッズの出来具合からその値段になったのかもしれませんが・・・
それになぜナイトメア−?と、キャラを使う意味がまったくない商品が多々あったり、また色や少しの違いで別の商品として販売したりと、そういった動きが私には今までののナイトメア−グッズの値段の高騰に便乗した商業主義に見えてしまいました。売れそうな物を販売して何が悪い!欲しくなければ買うな!と言われるかもしれませんが、物作りには、商品製作に対するポリシーと消費者のニーズを把握することが必要でしょう。そういったことがないまま、商品を垂れ流すだけ垂れ流す状況に見える時がよくありました。ファンとしてはナイトメアへの想いが強ければ強いほど、たとえ買わなくても、ナイトメア−に関するものは全部気になります。おもちゃ屋の片隅で売れ残りたたき売りをされている商品を見て悲しくなってしまうのは私だけではないでしょう。
日本の商品は大人のコレクターが主にターゲットということなのでしょうが、はじめ安いものが高くなってしまったのと、はじめからものが高いのはやはり意味が違うと思います。ナイトメア−グッズの値段が高くなったのは、ナイトメア−をそれだけ好きになったファンがいたのと商品が元々なかった結果です。ファンもできるなら普通のおもちゃのような値段で手に入れれるものなら入れたいと思っているはずです。ナイトメア−の商品は少々高くてもどんな商品でもOK-それを前提として物事を進め、下手な鉄砲数うちゃあたる的な販売を展開しているかのような状況は、ナイトメア−の品位を落としているようで私は嫌いです。
まあ、ニーズのあるもの、いいものを作ってくれ、それに見合ったお金を出すというのは問題ないのですが、ナイトメア−が好きだから商品をどうしても買ってしまうという純なファンの気持ちをもてあそぶような販売の仕方はやめてほしいと思いますし、売り手にもっとなんらかのポリシーを見せて欲しいと思います。ナイトメア−を理解する人が増えるのはいいですが、それを一過性のブームのようにあおるだけあおるやり方にはやはり反対です。
ティム・バートン自体、この映画はあまりヒットしないと思っていたような気がします。それにもかかわらず彼がこれを製作したのは、商業主義をはなれて、自分のとりたいもの、自分の思いを映像化したかったからに他ないと思うんです。そういった一人の人物の純な想いを具現化した映画だからこそ、同じく純で、熱烈なファンを生み出したのではないでしょうか。結果として、そういった純な想いとは裏腹に、グッズは高騰し、商業主義的傾向をまねいてしまいましたが、その素朴な気持ちを忘れてはいけないと思います。
4.ナイトメア−・コレクション、今
もう既に2008年。この映画が上映されてから約15年が経過しました。
私があまり好きではなかった約10年ぐらい前からの新製品ラッシュもおさまり、一方で、特にジャックのキャラクターグッズなどは、色々な場所で目にするようになりました。ナイトメアーという映画は知らなくても、キャラクターが魅力的ということで、キャラクターグッズが一人歩きし始めたといえるでしょうか(東京ディズニーランドのアトラクション『ホーンテッドマンション』にも、期間限定でナイトメアーのキャラクターが出演したりします)。また、ゲームソフトが開発されたり(2004年 プレステーション2ソフト『ティムバートン ナイトメアービフォアクリスマス ブギーの逆襲』など)、デジタル3D化されたバージョンが2006年に劇場公開されたりしています。
そして、昔のナイトメアーグッズは市場価格もかなり落ち着きました。コレクターにとっては、いい感じでグッズを集めることができるようになっている気がします。私自身のコレクションも充実し、購買ペースもかなり落ち着きました。新製品でも質のよいものがあり、購買意欲をそそられてしまいますが、やはり、1993年の上映当時に作られたアメリカのナイトメア−グッズにはよい意味でのおもちゃらしさがあり、そのあたたかみに私は惹かれしまいます。
毎年、クリスマスの頃にはナイトメアーの映画を家で見ています。
その時には、初めてこの映画を見た時のことや、コレクションに関わる色々な出来事を思い出します。
たくさんの気に入ったおもちゃやグッズに囲まれて、今は幸せな時間を過ごしています。
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